宣伝文句通り、二度読まずにはおられない恋愛小説『イニシエーション・ラブ』

イニシエーション・ラブ (文春文庫)
「この声。なんか、イメージと違うなぁ・・・」

漫画がアニメ化された時に、
誰しも一度くらいは経験したことがあるはず。
これは無意識のうちにキャラクターに声を与えているから。

おなじ事が小説にも言えるが、小説の場合は声だけじゃない。
主人公の部屋に自分の部屋を重ね、
ヒロインには密かに想いを寄せる人を重ね、
終いには

小説のオチにまで、自分好みのオチを押し付けている。

この本にはヤラレタ

人間は面白い物語が読みたいんじゃない
物語を面白いと感じる様に読みたいだけなんだ

本書はこの人間の性を巧く利用している。
舌を巻くほど上手に。

義務教育でならったよね。
「あなたの考えじゃなくて、著者の考えを読み取りなさい」って。
それが国語力だって。

安心していいゾ。
本書は国語力のない奴ほど楽しめる。
そしてラスト二行。
普通の恋愛小説から一気に魔法で捻じ曲げられたような世界へ誘い入れてくれる。

「ほらね。あなたが如何に見たいものしか見てないかわかったでしょ。」
ニヤリとしている著者の表情が思い浮かぶ。

もちろん、その著者の顔も僕の勝手なイメージだ。