2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

人間と獣とを隔てるもの、その薄さ『ミノタウロス』

近代以降、思想だとか、なんとか主義こそが時代の本流であって、個々人はその流れに流され溺れ死なぬように必死にもがくノイズのようなものと思っていた。 だから、歴史やら哲学やら経済理論やらを必至こいて勉強していた。 そんな私をさらりと嘲笑してくれ…

一人の老婆に二十世紀の悲劇を見る『オリガ・モリソブナの反語法』

キタ。疑う余地なく、今年一番の大収穫。 米原万里本は何冊も読み、その都度「これぞ最高傑作」と思ってきた。 しかし今回はちがう。 「ゼッタイにゼッタイにこれが最高傑作」 小学生的に言えば「超スーパーウルトラミラクルハイパー、傑作」。 1960年のプラ…

とてつもない衝撃、『夜と霧』

本を閉じ頭を上げ目を瞑る。 まるで本書を読んでいる間一度もまばたきをしなかったかのように、目がじんと熱くなる。 口の中は乾き、その水分は手から汗となっていた。 久しぶりに大きくため息をつく。 息つかせぬほどに本書が面白かったのではない。 読中た…