書く技術についての本は多かれど、ノンフィクションの書き方についての好著は稀有『調べる技術・書く技術』

調べる技術・書く技術 (講談社現代新書 1940)
あるテーマを設定し、それについて調べ、人に話を聞き、最後にまとめる技術を紹介するのが、本書のねらいである。
書き始めに7,8割の力を注げと断言する著者。そしてこれが本書の書き始めである。
大学の先生やらエッセイストやらコンサルやらの「書く技術」系の本は読んできたが、ノンフィクションライターの手による本書は一風変わっていた。
そして一番オモシロカッタ。

『調べる技術・書く技術』と称するだけあって、調べることの難しさ、大切さ、そして面白さにじわっとページを割いている。
それもそのはず、頭の中に既に書くべき何かしらがあって、それを紙面上で整える小説家やら大学の先生やらとは違って、ノンフィクションライターが書くべきものはどこまでいっても自分の外にしかないからだ。

したがって本書は、いわゆる「書き方についてのハウツー本」とは一線を画す。
著者がノンフィクションを書くに当たり、苦戦を強いられた取材、書くことの葛藤、そして下を巻くような名文との出会いのうちに体得していった智恵。
まさに本書そのものが一冊のノンフィクションになっている、そこに本書の面白さがある。

そして、本書はその先へと広がるノンフィクション作品群への優れたガイドブックにもなっている。ノンフィクション作品群への旅立ち、それ即ちこの世界の現実を見つめる旅となる。