人類13000年の鳥瞰図『銃・鉄・病原菌』

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎
世界の歴史といえば西洋史しか思い浮かばない人は自らの浅学とそれに端を置く偏見を恥ずべきだ。
その特効薬として本書ほど面白く刺激的なものはない。
しかし、世界史=西洋史となってしまったことも無理はないのである。

歴史とは常に「勝者により書かれ、支配者により伝えられるもの」だから。

では、そもそもなぜ、ヨーロッパが世界を支配したのか。ここにこそ本書の問題意識は始まる。

その先の論旨の展開はコンサルなんかで見かける問題解決のアプローチのお手本。
大きな問題を具体的な小さな問題に分解し一つ一つ解決、その中で現れる新しい疑問こそが当初の問題の本質的要因となっているという発想だ。
本書の主題に当てはめればこんな感じだ。

ヨーロッパの支配を可能としたものは何か。

<疑問>
コルテスに始まるヨーロッパと「新世界」との邂逅。
スペインがアステカ帝国に長じたのはなぜか。

<要因>
1.スペイン側には騎馬隊を中心とした機動力があった。
2.スペイン人には数多の病原菌に対する抗体があった。
3.スペイン側には鉄製の強力な武具があった。

<結果>
これらがスペインの勝利を決定付けた。

<疑問>
なぜ騎馬隊、抗体、鉄を持っていたのはスペインであり、その逆ではなかったか。

<要因>
1.病原菌に対する抗体を人間に与えたのは家畜と集団生活である。
2.鉄に代表される文明の発生にはある程度の人口密度が必要である。

<疑問>
どの大陸にも先んじてユーラシア大陸で集団生活が始まったのは何故か。

<要因>
1.家畜可能な動物が多く棲んでいた。
2.栽培可能な植物が多く自生していた。
3.そしてそれらが他の大陸とは比較にならない速さで伝播していった。

<疑問>
それは、なぜか



という、結論に至るための帰納法が回り続ける。

「ヨーロッパの支配を可能としたものは何か。」
この問に対する究極的な解答。
それは是非自身の目で確かめて欲しい。